(万葉集にみる)秋のななくさ
「秋の野に 咲きたる花を指折りて かき数ふれば 七種(くさ)の花」    山上臣憶良
秋風は 日に異(け)に吹きぬ 
高円(たかまど)の 野辺の秋萩 
散らまく惜しも

    
(巻十  ニ一ニ一)
「高円(たかまど)の野辺に咲く萩が

日増しに吹く秋風に散っていくのが
惜しいなあ」
人皆は 萩を秋と言ふ よし我は
尾花が末(うれ)を 秋とは言はむ
      (巻十  二一一〇)

みんなは萩を見て一番秋らしさを
感じるといいますが、ままよ私は
尾花こそが秋の風物だと言いたい」

 
ま葛延(は)ふ 夏野の繁く かく恋ひば
まこと我が命 常ならめやも
     (巻十  一九八五)

「葛が旺盛に這い広がる夏野のように、
こんなにもあなたを恋していたら、ほん
とうに私の命はいつまで保つだろうか」

我がやどの なでしこの花 盛りなり
手折りて一目 見せむ児(こ)もがも
     大伴家持 (巻八  一四九六)

なでしこの花が今真っ盛りです。手折って
一目見せてやれるような女の子がいたら
よいのになあ」

手に取れば 袖さへにほふ をみなえし
この白露に 散らまく惜しも
     (巻十  二一一五)
袖までが黄色に染まってしまうような
美しいオミナエシが、この白露で
散ってしまうのが惜しいなあ」
萩の花 尾花 葛 なでしこの花 女郎花
また藤袴 朝がほの花

     山上憶良 (巻八  一五三八) 
 フジバカマを詠んだ詩はこの一種である
朝顔は 朝露負(お)いて 咲くといへど
夕影にこそ 咲き増さりけれ
      (巻十  二一〇四)

「朝顔は朝露浴びて咲くというけれども、
夕方の光の中でこそ一層咲き誇っている」

やまと 花萬葉  片岡寧豊 文  東方出版から文を引用
フジバカマ(キク科)の写真をもっていないので
(代わりの植物)
ヒヨドリバナ(キク科 花期8〜10月
       平成14年9月8日 神戸
キキョウ(キキョウ科) 花期7〜9月
   平成14年9月8日 神戸

 万葉集に歌われている朝顔はキキョウ
以外にアサガオ、ムクゲ、ヒルガオなどの
説があるが、ここでは一番有力なキキョウ
とした。

ヤマハギ(マメ科) 花期6〜9月
  平成14年9月7日 神戸

ススキ(イネ科) 花期8〜10月
  平成14年9月10日  東播磨

カワラナデシコ(ナデシコ科)
        
花期7〜10月

   平成14年9月8日  神戸

クズ(マメ科) 花期7〜10月
   
平成14年9月4日 神戸

オミナエシ(オミナエシ科)
       
花期8〜10月

      平成14年9月8日  神戸

キキョウ
カワラナデシコ
クズ
オミナエシ
フジバカマ(代打:ヒヨドリバナ)
ヤマハギ
ススキ
  このごろヒガンバナも咲きはじめ秋だと思う光景を見る。そう思う気持ちを気に万葉集に出ている
 秋のななくさを集めてみました。それぞれの花の花期を見てみると「夏に咲く花」が多いですね。
 旧暦を基準に「秋」を考えたためかな。と思うのですがどうでしょうか。旧暦で見てみると今のお盆が
 過ぎれば秋ということですね。(平成14年9月11日 博行 記)
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